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傍若無人(ぼうじゃくぶじん)

2019-02-09

ビジネスパーソンとして肝に銘じたい故事、とりわけ忘・新年会に臨むにあたってドキッとさせられる言葉をご紹介いたしましょう。

本題に入る前に「荊軻(けいか)」という人物をご存知でしょうか。

中国戦国時代末期の刺客で『史記(刺客列伝)』にも、志ある者として後世に名を残す5人のひとりに数えられています。

秦王(後の始皇帝)の暗殺を企て、王宮で匕首を追いかけ回すシーンは国語の教科書などにも取り上げられているので、見覚えのある方もいらっしゃるかもしれません。

また荊軻が敵地へと旅立つ折、再び帰ることのかなわぬ国、二度と会えない友に詠んだ「風蕭々(しょうしょう)として易水寒し。壮士ひとたび去って復た還らず」という漢詩を聞いたことのある方もいらっしゃるでしょう。

その生涯は度々ドラマ・映画に登場し、世界的名優が演じるなど、とりわけ歴史ファンの間では人気のある存在といえます。

そんな荊軻ですが、仲間とお酒を飲むのも大好きだったようで、飲み過ぎては歌い騒ぎ、時には抱き合って泣き始めるほどだったとか。

その様子が「傍らに人無きが若(ごと)し」、つまり傍に人がいないかのような振る舞いだったことから「傍若無人」という成語が生まれ、2200年余りを経た現代にまで語り継がれています。

ところで暗殺という行為の是非はともかく、歴史に大きな足跡を遺しながら、ほとんどの門外漢は荊軻という名前にピンと来ることはなくとも「傍若無人」という表現は知っているのではないでしょうか。

「傍若無人」な酔漢は、実は世界史を揺るがせた傑物だった。

が、広く記憶されているのはその酔態のみ・・・。

大人物に酒豪は少なくなく、荊軻が斬殺された後、年月をかけて仇討ちを決行したのは共に酒を酌み交わした友だったという後日談もありますから、「飲みニケーション」が絆を深める場となることもあるでしょう。

とは言え度が過ぎれば、たとえ司馬遷が認めた荊軻ほどの大物であっても「傍若無人」のイメージは独り歩きを始めます。

宴会の増えるこの季節、乾杯の前に「いわんや常人をや」二千有余年の教えを噛み締めてみてはいかがでしょうか。