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井の中の蛙、大海を知らず
2020-02-07
故事成語をご紹介いたしましょう。
「井の中の蛙、大海を知らず」のフレーズは、あまりに有名であらためてご説明の必要もないかもしれません。
「狭い世界に閉じこもり、広い世界のあることを知らない」、つまり「己の狭い知識にとらわれ、大局的な判断のできない」喩えとして使われています。
原典は老荘思想の祖・荘子が記したとされる『荘子』(秋水篇)。
秋雨を集め拡がる黄河を眺め「天下の美は皆ここにある」と自惚れた河神が、河を下って出会った海神に「井の中の蛙に海のことを語っても分からないのは狭い所に留められているから」と諭され「夏の虫に氷のことを話しても仕方ないのは一時しか見ていないから。
見識の狭い人に道を説けないのは教えに縛られているから」と告げられた物語がそのルーツなのだとか。
ここで「やはり大海を知らねば!」と感じた方にはさらにその続きをご覧いただきたいところです。
この言葉には日中両国で異なる展開が待っているのです。
まず日本ではいつ頃、誰が加えたものか定かではないのですが「されど空の青さを知る」なる後段があるのだそう。
一芸に秀でることに重きを置いた、日本らしい素敵な言い回しですね。
では中国では?というと、海神は「お前は河岸を離れ、大海を望み、己の小ささを悟った。
ようやく大いなる理(ことわり)について語れるな」と切り出すや「道(タオ)」をめぐる問答を始めます。
「智慧ある者は小さいからといって卑屈にもならず、大きいからといって得意にもならない。
万物の数量は無限で大小も相対的なものと知っているから・・・」と。
ご興味のある方は、ぜひ『荘子』を紐解いてみてください。
「井の中の蛙~」と同じ意とされる「夏虫疑氷」、或いは「秋水篇」ということで、まさに夏から秋にかけた今こそ味わいたいストーリー。
ビジネスの河のほとりで、大海に出るか空を見上げるか、はたまた道(タオ)を究めるか。
来る夜長、1匹のカエルや虫となった気持ちで荘子の世界観を感じてみてはいかがでしょうか。